【文章サンプル】
〜中略〜
「――ちょっと待て」
不意に、あわてた様子でMZDが身を乗り出した。
周りに囲いのないソファーの上でそんなことをしたものだから、彼の体は当然、床へ転落する。
顎からまっさかさま……という醜態こそ免れたが、それは久しく見ない、神の動揺した姿だった。
浮遊できる能力も忘れ、MZDはジッと影の顔を凝視する。
目にしたのは、あまりにあり得ない変化だった。
影の顔の造作的に「右目」にあたる部分から、赤・白・黄・紫の四つの色が、
花が開くように飛び出しては引っ込む、という動きを繰り返していたのだ。
(まさか……そんなこと……)
驚愕に瞳を見開き、夢ならば覚めてほしいと瞬時で願った。
眉が波打って、唇が金魚の餌付けされる格好にも似てくると、やたらと羞恥的な光景になった。
その「右目に花が咲く」現象は、影がMZDの従者となる以前に見られたものだった。
MZDが神になってすぐの頃、世界として創造される前の空間で、ふたりは出会った。
「?(はてな)」
〜中略〜